手足を炎で拘束された堕天馬は、手下の怨霊が煌希の邪魔をしているのを後目に確認し、安心したようにほっと表情を緩めた。 「随分と余裕そうね」 堕天馬を拘束している炎神、稀炎が少し不満気な表情で言う。手足を焼かれながらも、全く苦痛の表情を見せずに堕天馬は笑う。 「まあね。仲間の無事が何より。仲間思いなあんたたちなら理解できるだろう?」...
「それで妖鉱石は全部消えちゃったんだ、残念だったねぇ」 青い着物の獣天狗、師匠こと紅河鈴葉がせんべいを齧りながら言う。あの日から二日後、鈴葉が山から帰ってきたのだ。風沙梨の家にて、ちゃぶ台を囲んで妖鉱石から始まった事件の話をしていた。 「でも、怪我人も森への大きな影響もなくてよかったね!」 「でしょ!私頑張ったのよ!褒めて褒めて」...
腹の痛みで思考が飛び、首を絞められて息ができず視界がちらつく。振り払おうと暴れると突き刺さったままの薙刀に肉を抉られるが、苦痛でじっともしていられない。冷静な判断もできず、ただ本能のままにもがいていた時、こちらを見上げるリンと目が合った。青ざめ、泣きそうな、今まで見たことのない必死の形相で氷から脱出しようとしている。...