幻夢界小噺 · 2024/05/06
「堕天霊の力は覚醒したのか?」 「微妙ですね。一応制御できるようになったようですが、使えるのは力の一部だけです。堕天霊の意識も目覚めていないようですので、今のところは問題ないでしょう」 「なるほど……」...

幻夢界小噺 · 2024/04/29
遥かなる海の海底。太陽の光が僅かにしか届かない場所に、ひっそりと神社が建っていた。神社はドーム状のうっすらと光る結界に覆われており、結界内は視界に困らない程の明るさになっていた。そして中には海水はなく、地上のような空気がある空間になっている。...

幻夢界小噺 · 2024/04/22
 火山の噴火、森の衰弱、激しい暴風雨、大荒れする海。突然幻夢界を襲った自然災害。それらは封印状態だった幻夢界の創造神の四柱が目覚めた反動であり、神たちが正気を取り戻すと共に収まっていった。...

2024/04/15
「桜蘭様、どちらへ?」 「ちょっと散歩だよ」 「今夜は御三家での会議がありますが」 「それまでには帰る」  桜蘭は引き留めようとする従者から逃れるように屋敷を出て、虹の森へやって来る。従者がついてきてないことを確認し、ふぅとため息を吐く。...

幻夢界小噺 · 2024/04/08
「これでよく生きてるよな」 「これが大鬼の力なんじゃねーの?さっさと運ぼうぜ」  二人の鬼の声で小姫は目を覚ました。時間は分からないが、日は完全に昇っていて眩しい。青空には桜の花びらが舞っている。 「うわ、マジで生きてるわ。おい、大人しくしてろよ」...

幻夢界小噺 · 2024/04/01
 叫び疲れてからも、小姫は恨みの感情を煮えたぎらせていた。木の根が刺さったままで回復もできず、身動きも取れない現状。どんどん弱っていくはずだが、小姫の強い憎しみは意識をはっきりさせるだけの力があった。...

幻夢界小噺 · 2024/03/25
 それからは人目を避けて桜蘭と過ごし、互いに家族へはそれっぽい情報を伝え続けた。共に桜を見て、雨の中傘を差して歩き、水場で暑さをしのぎ、夜に虫の声を聞き、赤くなる葉を眺め、熟れた果実を齧り、雪の上に足跡をつけた。毎日ではないが、都合の合う時は桜蘭と過ごし、一年が経った。...

人間界通信 · 2024/03/18
リィムと羊のネムネムさんのトートバッグを作りました。 キャラものを使うのが苦手なので、ネムネムさんメインのデザインにしました。個人的にほしかったので満足。 BOOTHにて、1,120円で受注生産となっています。 生地もしっかりしてて、持ち手も大きくて肩にかけやすいです。 BOOTH→https://manjuu-suzume.booth.pm/

幻夢界小噺 · 2024/03/18
「あ……わ、わた、し」  ぽろぽろと小姫の頬を伝う大粒の涙。どうして泣いているのか分からず、困惑して目元を拭うが、すぐに溢れてしまう。そんな小姫の肩に桜蘭は腕を回し、もたれさせるように引き寄せた。桜蘭に抱きつくような体勢になり、彼女の温かい体温が小姫を包み込む。 「桜蘭様……」 「様なんてつけないで、呼び捨てでいいよ」...

幻夢界小噺 · 2024/03/11
 ゆっくりと意識が戻り始める。最悪な夢を見た。小姫の人生が一転した日の記憶。心臓がバクバクし、嫌な汗もかいている一方、何かに守られているような、安心するような感覚もある。まどろみの中で、だんだん思考と感覚がはっきりしてきた。頭を撫でられているのだ。眠気で重い瞼を開けると、薄暗い倉庫の中。たしか桜蘭に連れて来られたはずだ。床で寝ていて身体が強張っているが、頭は枕のような何かにもたれている。 「あ、起きた?」  桜蘭の声がすぐそばで聞こえた。はっとして声の方、斜め上に視線を送ると、こちらを覗き込む桜蘭の顔があった。体勢的に、今自分は桜蘭に膝枕をされている……? 「ああ、急に動かない方が――」 「うっ」 「ごめん、目で見える範囲は治せたんだけど、身体の中は怪我の場所がわからなくて……」  そういえば傷を治療してもらっていたのだった。じっとしていれば痛みを感じない程に傷は回復しているようだが、起き上がろうとするとまだあちこち痛む。桜蘭の顔は少し血色が悪く、疲労しきっている。そこまでして苦手な治癒術を施してくれたのだろう。 「大丈夫です。これくらいなら、後は自分で回復できます。……ありがとうございます」  小姫はそう言って、ゆっくり上半身を起こす。かかっていた毛布がするりと落ち、肌が空気にさらされて寒い。肌が……? 「あ、その!傷探すときに脱がしただけで!血まみれだったから勝手に洗っちゃったけど、多分もう乾いてるはず!」  桜蘭が慌てて立ち上がり、足が痺れたのかぎこちなく歩いて行った。別に気にしないのに。 「はい、これ。……ぼろぼろになっちゃってるし、私のおふるあげようか?」 「いえ、私がボロ布以外着ていたら不審がられます」 「そっか……。ちょ、ちょっとは隠してよ!」

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